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2023/08/21

アキラの映画日誌#009 カサブランカ



 男が男らしく、女が女らしく生きるとはどういう事か、極めて困難な状況下で人が人を愛するとはどういう事かを溢れる切なさと共に教えてくれる忘れ得ぬ名作〈1942年 米 モノクロ〉です。  
時は1941年、親ナチス政権管理下に置かれたフランス領モロッコ(アフリカ北西部) の都市カサブランカが舞台です。当時、独軍の侵略によるヨーロッパ戦災を逃れた多くの人々はポルトガル経由でアメリカへの亡命を図ろうとしていました。抗独の闘士でアメリカ人の主人公リック(ハンフリーボガード)はパリで暮らしていましたが、美貌の女性イルザ(イングリッドバーグマン)と激しい恋に墜ちます。しかし、ナチスの手によるパリ陥落寸前、最愛の女性(ひと)イルザは理由も告げず、突然リックの下を去ってしまいます。

リックはイルザの面影だけを抱いて、戦時下の騒然としたカサブランカへ逃れ、大きな酒場「カフェアメリカン」の主となります。映画では、当時の北アフリカ、モロッコ王朝最大の都市、カサブランカの混沌といかがわしさがよく描かれています。この時、ボガード44才、バーグマン27才です。

この作品は後にニューヨークの才人ウディ・アレンが書いた「ボギー(ボガードの愛称)、俺も男だ」に象徴されるアメリカ男性の理想像ボガードの身のこなしと、魂が吸い寄せられる程、美しいバーグマンを只々ため息と共に見つめる映画でもあります。  

身を焦がした恋の傷手を今も引きずっているリックの下へ対独抵抗運動の英雄である夫ラズロと共にイルザが現れます。紫煙立ち込める酒場でイルザは昔なじみの黒人のピアノ弾きサムを見つけてこう云います。「サム、あの曲を弾いて」あの曲というのはリックとイルザが深く愛し合っていた時、傍らでいつもサムが弾いていた「時の過ぎゆくままに」as time goes byです。リックの深い哀しみを知っているサムはとぼけます。「もう忘れました」「お願い、サム」その願いに抗しきれず、弾き語りを始めるサム。数ある映画挿入歌の中の名曲中の名曲です。ピアノを聞いてサムのもとへ足早にやって来るリック、「サム、その曲は禁止だぞ!」そして二人は運命の再会を果たします。

その夜、閉店した酒場でリックは独り、酒に溺れます。「世界中に星の数ほど酒場はあるのに、何故この店に来たんだ」
ここから滑るように展開する幸福感に充ち溢れたパリ陥落までの二人の回想シーンは夢のように美しく、正に映画的快感そのものです。ここで語られる「君の瞳に乾杯」「この瞬間を永遠に」の名セリフ名シーン。光輝くイルザの美貌。迫るパリ陥落。しかし、固く約束した彼女は結局駅には姿を現さず、降りしきる雨の中、傷心のリックはサムと共にカサブランカへ・・・。
この作品には名セリフがたくさん登場します。酒場の主リックに恋し、追いかける若い女性が云います。「昨日はどこに・・・?」「そんな昔のことは覚えていない」あきらめ切れない女性は更に尋ねます。「今夜、会える?」「そんな先のことは分からない」

昔、神田の裏通りにカウンター7席の小さな鮨屋がありました。親父はいつも粋な着物にたすき掛けで、若い衆ひとり横に於いてつけ場に立っていました。NHKの連続ドラマの主人公のモデルになった程の人で、名店でしたが気難しい親方で有名でした。7席のカウンターにお客が4人しかいないのに、新しい客が入ろうとすると、「満員だよ、見りゃあ分かるじゃねえか」と云って断るのです。客筋も非常に良く、丸の内あたりの一流サラリーマンが多く来店していました。ある時、そのうちのひとりが帰り際に「来週の月曜日、空いてるかい?」と親父に聞きました。すると、博識の映画通でもあった親父は即座に「そんな先のことはわからねえヨ」と、つっけんどんに答えました。ハンフリーボガードは姿を変えて神田の鮨屋に立っていたのでした。  

カサブランカの街に徐々に増えて行くナチス軍。リックの酒場で独軍士官の一団がドイツの愛国歌を合唱し始めると、対抗するように一人また一人と立ち上がったフランス人の客達が仏国歌「ラ・マルセイエーズ」を歌い継ぎ、大合唱になって行くシーンは熱く感動的です。深夜、一人でリックのもとを訪れたイルザは痛切な告白をします。彼女には愛と尊敬の入り交じった抗独の英雄であり、リックと知り合う前に夫であったラズロがいたのです。しかし、彼はナチスに捕えられ、絶望的な収容所に収監され、帰還は不可能と思われていました。その頃リックとイルザは出会い、激しい恋に落ちたのでした。三者三様の愛が交錯します。しかし、彼女はリックに毅然と告げます・「もう逃げない。私は貴方と共に」

三人の互いへの深い愛と哀しみを抱いたまま、映画は最後の霧に煙る夜の飛行場へ。ラズロは愛ゆえに彼女を逃がそうとし、イルザもまた心から敬愛する彼を命がけで逃がそうとします。迫るナチスの追っ手。土壇場でリックは二人を飛行機に乗せます。溢れる涙に暮れるイルザ「なぜ?」「今、行かないと君は一生後悔するだろう」「あなたは?」「俺たちにはいつでも想い出のパリがある」ハンフリーボガードからこそ似合う名セリフです。
そして飛行機は飛び立ち、彼等は生涯二度と逢えない別れをします。深い夜霧に包まれた飛行場を全て承知の老獪な地元警察署長とリックが軽口を叩き合いながら肩を並べて去って行く。ラ・マルセイエーズが静かに流れて、何とも云えない深い余韻を残しながらENDマークです。  

昔、ロンドンのサヴォイホテルに泊まった時、ホテルのバーに黒人のピアノ弾きがいたのでas time goes byをリクエストしたら即興で見事に弾いてくれ、感動しました。翌日、フロントで旅行中の女優、大原麗子さんを見かけました。この女性(ひと)も又、とても儚げで美しい女性(ひと)でした。

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