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2022/04/11

アキラの映画日誌#001「ウエストサイド物語」

子供の頃から映画が好きで今までに約5000本超観ました。 学生時代にキネマ旬報に投稿していたのを思い出し 思いつくままに書いてみたいと思います

NYの下町を舞台に2つの移民不良少年グループの抗争とその犠牲になる二人の若い男女のたった2日間の燃え上がるような許されない恋と哀切な死がミュージカル形式で鮮烈に描かれています。
1961年公開。監督ロバートワイズ、振り付けジェロームロビンス、美術ポリスレヴィン、タイトル・ソウルバスの卓越したセンスと才能の4人が全熱量を注ぎ込んだ傑作であり、ミュージカル映画の金字塔です。
映画の冒頭、無数の垂直線が画面に現れます。全編のメドレーと共に刻々と色彩が変化して行くと、やがてその垂直線がマンハッタンのビル群の輪郭線だった事が分かります。 ソウルバスによる洗練とセンスの極み。マンハッタンのビル群を真上から俯瞰で捉えたカメラがゆっくりとエンパイアステートビルを過ぎ、ヤンキースタジアムを過ぎてビルの谷間のバスケットコートに降りて行くと、フェンスの前で指を鳴らしている「ジット団」の群れへ。彼等が街を流しながらダンスシーンへ移って行く展開の、まるで無重力空間を移動するかの如き実にスムースなカメラワークの見事さ。
対立する「シャーク団」と争いながら全力で街中を走り抜く疾走感。刃物のエッジのような切れのあるダンスシーンの連続。脇役のひとりひとりに至るまで、張り詰めた緊張感と個性豊かな存在感が充ちています。
ここ迄の俊速な動きと音楽だけで、観客の心はわし掴みにされます。 「ジェツト団」リーダー ラスタンブリンの一流体操選手のような目を見張る動き、「シャーク団」リーダー ジョージチャキリスの気品溢れる仕草、恋の主役トニー(リチャードベイマー)の瑞々しい情熱と爆発するエネルギー、そして可憐なマリア(ナタリーウッド)の美貌。映画の後半恋人トニーを想い、微かな夜風に純白のワンピースの裾をそよがせながらナタリーがひとりビルの屋上で踊るシーンは、吹き抜ける一陣の風のように短かった彼女の生涯を思うとその美しさと儚さが際立ちます。
「COOL」「体育館でのダンス」「アメリカ」に代表されるフィジカル的に圧倒される激しい名ダンスシーンの数々、「マリア」「トゥナイト」の心震わせる名曲、そして「5重奏」の凄み。 映画の背景には当時からアメリカが抱える移民や貧困の問題があります。しかし、それらの全てを凌駕して、悲劇へ突っ走る緻密なプロットの組み立て、少年少女から大人になるまでの短い青春の迸るエネルギー、若さゆえの衝動と悔恨、誰の人生にも一度はある誰かを猛烈に好きになつた10代の夏の宵の溢れ出る切ない想いの全てがここにあります。
今年(2022年)、S・スピルバーグが60年振りにリメイクした「ウエストサイドストーリー」が公開されました。世界中の映画製作者の頂点、映画の申し子スピルバーグならではのとても完成度の高い作品ですが、残念ながら、そこにはあの全編キラキラした魔法に包まれたオリジナルのオーラはもうなかったのです。

   

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